2.1.15

同じ病棟だった人たち

私の病室は個室だった。入院中常に移動ベッドか車椅子で運ばれていたため、周りの様子はよく分からなかった。しかしどうやら同じ並びにもう二つ病室があるらしかった。一度だけ、3人一緒のタイミングでレントゲンを待っていたことがある。

一人は60歳くらいの女性だった。死にそうに弱々しかった。私には検査のたびに車椅子か移動ベッドが迎えに来たので、みんなそうかと思っていたら、彼女はレントゲン室まで一人で歩いていた。よろよろして、ものすごく遅かった。35年前に、私と同じ症状で入院し、私と同じ手術をした。その後無事に観察期間を終えて、子供を二人産み、少し前に同じ病気を再発した。今度の病巣は散らばっていて、以後毎月のように手術している。子供を産んで、育てる時間があったから、私は幸運だ。と彼女は言った。

もう一人の患者も女性だった。頭髪がなかったので歳はよくわからない。彼女は車椅子に乗っていた。何か点滴が複雑になったようなものを体につけていた。彼女は、弱っているというより、違うものになってしまっている感じがした。頭髪だけじゃなく、体のボリュームも、目の強さも、肌の質感も、淡々としているけどどことなく怒ったような口調も、本来の彼女のものではないような気がした。肺に病巣があるが、心臓に近すぎて手術できない。末期だ。と言った。

私も35年後に、一人目の彼女のようになるのだろうか。そうしてその時、今から健康になったとして、その期間をふりかえって幸せだったと思うだろうか。そしていつかもう一人の彼女のように、誰にも救えないところに一人落ち込んでいくんだろうか。これからの人生が、そこだけ文字が赤い有限のゴールデンウィークのように思えた。同時に、医師たちが私の部屋に来るのが少し嬉しそうな理由がわかった。