ディエブグには、ジニアレの知人の家に偶然遊びに来た、ミユという女性が住んでいる。ミユは、ディエブグのアーティストをサポートしたり、ゴミ問題に関わる啓発の活動をしている。初対面だったが、お互いのやってることを話して、すぐにディエブグに行くことが決まった。
ディエブグはワガより若干南にあり、砂漠化が進行するサヘル地域から外れる。そのためか、緑が多く、夕方には涼しくなるし、過ごしやすい印象。大きな樹の下に、ベンチが作っておいてあったりして、ほのぼのした余裕の雰囲気を感じた。
ミユの紹介で、町で唯一の芸術家というキンダさんに会う。キンダは絵を描いたり、彫刻を作ったり。ゴミから作ったというオブジェが、庭で出発を待っていた。近々、市役所に設置されるらしい。
アソシエーションのHP WOUNTGO SUI
夕方には、偶然すれ違ったミユの友人と、なぜか二人きりでミユを待つことに。ベンチで夕日を見ながら、彼女のやってることやわたしのやってることを話した。
彼女の食べ物に関する、科学的で正確な知識に驚いた。わたしの作品制作には、食べ物がどこからくるのか?命がどのように終わるのか?などの問題が関わっているが、あくまで自分の中からとらえた世界の見え方にこだわっている。その見え方は、必ずしも科学的な事実と合致しているわけではないし、客観的事実を伝えるのはわたしの仕事ではないとも思っている。だからこそ、近い関心ごとを、とてもちがった視点でとらえて、それにもとづいて真摯に行動している彼女が素敵に見えた。彼女の仕事場の近くで解体があるはずだからと、連絡をくれると約束してくれた。
日が落ちるころ、町全体が停電にみまわれた。停電はよくあるけど、ここまで長いのは珍しいという。それでもみんなは働く。まっくらな往来を小さな携帯のあかりがちらちら行き来する様子は、ちょうちんを彷彿とさせ、何かお祭りのようだった。
夜、ミユと友人に、鶏肉を食べに連れて行ってもらった。
鶏は、その辺で飼っているのをさっき絞めたようだった。食べやすい大きさに切られた二羽ぶんの肉が、スパイスと一緒にお皿に乗っていた。一切れごとにパーツが違うので、味が変わっておもしろい。ついている肉は多くはないが、ひたすらおいしかった。(が、写真はムトン)
停電のせいであたり一面真っ暗すぎて、わたしには、隣の席すら見えなかった。屋外の席で、懐中電灯で、お皿の上だけ照らして食べていると、空が星でいっぱいなことに気がついた。去年スバールバルで見たよりも明るい、満天の星だった。パリに帰ってから「ディエブグの鶏さいこう。パリのレストランは最高でも三ツ星だけど、ディエブグは星3万個くらい」と言い続けているが、ぜんぜん誰にもウケない。